視界があまり開けていると

 

 視界があまり開けているとは言えない森林地帯を二手に分かれて行軍している。前衛は李項が率いて、後衛は陸司馬が統率していた。面子をみれば随分と無茶をしてきたなと解るような懐かしの奴らが増えていた。

 

「今回難しいのは主将を倒さずに敵を減らしていくってところだ。出来れば指揮権を得ない内に郭淮将軍を排除したいとすら思っているが、全軍を退けるよりも難しいだろうな」

 

 散々にうちのめせば半数が残っ playgroup hong kongていても曹真は逃げるだろうが、郭淮将軍に二万が与えられて自由を得れば勝敗すら不明だ。だが幾ら有能でも序列は乱せないし、曹真は出自や階級でものを考えるだろう。何せそれを蔑ろにすれば己が廃される恐れがあるわけだからな。

 

「曹真は良く言っても凡将どまりの才能だと軍師らが評価していました。ですが部下からの評判は高く、皇帝からの信任も厚い。温厚ではありますが、肥満であることを笑われた時に激怒したとも。恐らくはおのれを卑下されるのを好まず、他者の責を気にしないような性格なのでしょう」

 

 なるほど、そうすると郭淮の失敗を声高に叫んでも、構わん構わんと許してしまい、なお働きを促進させるわけか。それなら部下から人気が出るのも解らなくもない。

 

 一方で自分自身へは甘いんだろうな、肥満のうえ侮辱を許せないとは。逆に考えろ、曹真を貶められて部下が落ち付けと制止を繰り返せるものだろうか? 反発してより勢いを増して前向きに動かざるをえなくなるのでは?

 

 術中にはまっているとわかりながら、それでいてやめることも出来ない。どうにかして魏軍を引き回せれば隙を衝いて撃破することも出来るはずだ。

 

「簡単なもので良いから、白地の旗を用意しろ。そうだな、数は千本もあれば良い」

 

「直ぐに揃えます、新たな軍旗をおつくりで?」

 

「いや、ちょっとした策を思い付いた。郤正の出番が近いぞ」 それだけ言うとまた別のことを考える、蜀全体についてだ。成都の騒乱がいつ落ち着くかで打つ手が変わって来る、兵糧の輸送も滞ることもあれば、江州で差し止められることもある。不安定は常ではあるが、本国からの保有が途絶えても宇山を確保出来れば多少は持つというのがありがたい。

 

 司馬懿ならば全て気づいているだろうが、最前線で戦えと命じられてしまえば宮廷の動きについても行けまい。そうなれば注意力を分散させる必要性から万全でも無くなる、それが実務を受け持つ者の弱点だ。

 

「ここから東部百里までの偵察と地図製作も同時進行させておけ。大雑把でも構わんから急いで地形図を得るんだ」

 

「御意」

 

 思い付いた順番に側近に命じて行く、何かを組み上げていると知ってか誰も話掛けてはこない。野営を行い明日は魏軍と鉢合わせるだろうところで斥候が戻って来る、予定の通り新汲周辺で双方の軍が交戦距離まで数時間で休んでいるようだ。

 

「夜襲を仕掛けてくるのではないでしょうか?」

 

「だとしても李項が防備を怠るはずがない、不意打ちはされんさ。こちらから仕掛けることもしているだろうが、騒ぎが起こるだけでさしたる被害も与えられん。ならば捕虜がこちらの情報を漏らさんように守りを固めているはずだ」

 

 あべこべに弱点を晒してしまえば不利になるからな。幕の外で何かやり取りをしているこえが聞こえてくる。親衛兵が一人入って来ると「地元の民がご領主様にあって話をしたいとやってきていますが、いかがいたしましょうか」ここまで取次が上がって来るのは珍しくはない、勝手に却下するのを厳禁としているからだ。

 

「会おう、通せ」

 

 陸司馬が左手に立つと剣に手を添えて神経を尖らせるが、決して殺気を漏らしたりはしない。話の邪魔をするつもりは無いのだ。

 

 親衛隊に連れてこられた老人と中年お二人組み、長老と若頭のようなやつらだろうか。

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